クレオパトラ~古代エジプト女王が愛した香りとは?
古代エジプトは、私たちが想像する以上に香りに深い意味を持っていました。神々に捧げるための香りは、神事や王の葬儀などの宗教儀式に欠かせないものとして重要視されていました。また、クレオパトラにとって香りは、彼女の魅力や権力を高めるための強力な武器でもありました。彼女が愛用した香りやそれが政治的・外交的にどのように利用されたかを探ることで、古代エジプトの女王としての権威や影響力を垣間見ることができます。
さらに、時代を超えた香りの魅力を味わってみたい方には、古代エジプトの焚香料「キフィー」の再現レシピもご紹介します。
このように、古来より芳香植物の香りには多面的な役割があり、そして、古代エジプトの文化や歴史に深く根付いていたのです。香りに隠されたストーリーを感じる旅に、ぜひお付き合いください。
目次
古代エジプトにおける香りの役割
古代エジプトにおいて、香りは単なる嗜好的な楽しみ以上の重要な役割を果たしていました。その香りは、神々に捧げる神聖なもので、主に宗教儀式に使用されていました。ここでは、古代エジプトにおける香りの役割を掘り下げていきます。
神々に捧げる香り
エジプト人は、香りが神々とのコミュニケーションの手段であると信じていました。神殿では香料が焚かれ、かぐわしい煙(香煙)とともに魂が天に導かれることを願いました。香料や香水を表す「perfume」は、ラテン語の「per(通して)」と「fumum(煙)」に由来しています。香木や乳香(フランキンセンス)、没薬(ミルラ)といった香料は、特に神聖視され、神々に捧げられる際は、特別な関心を持って取り扱われました。これらの香りは、神々への贈り物であり、人間が神々と一体感を持つための媒介ともなったのです。
香りを焚く「薫香」は神殿の儀式の中心でした。天に昇るかぐわしい煙は神聖さや浄化、そして癒しの象徴として、人と神をつなぐものと考えられていたのです。なお、乳香や没薬はエジプトでは産出されず、黄金や象牙などと同じく、周辺諸国との交易で得られる大変貴重なものでしたので、王族と聖職者しか使うことができませんでした。
このように香りは、エジプト人の宗教的な儀式の実践や信仰において、非常に重要な要素だったのです。
ミイラの語源
古代エジプトにおけるミイラ作りは、死後の世界への信仰と密接に結びついていました。エジプト人は、死後も魂が肉体に戻り、来世での復活や再生を信じており、そのために肉体を保存する必要がありました。肉体を腐敗から守り、永遠に保存するために、ミイラ作りの技術が発展したといわれています。その際、ミルラやフランキンセンスなどの香料や多くの花のエッセンス、コリアンダーやシダーウッドなどの芳香植物が使われたのですが、ミイラの語源はこの「ミルラ」から来ているという説もあります。遺体から取り出した内臓はミルラを用いた香油で清めて殺菌し、ほかの芳香植物とともに防腐剤として体の中に納められました。
香りはまた、宗教的な浄化の意味も持っていました。死者が来世で安らかに過ごせるようにするための重要な要素とされていたのです。ミイラ製造の過程では、香油や香料を染み込ませた包帯が巻かれることが多く、これによって死者の体は神聖な香りに包まれ、来世での再生を象徴するものとなりました。このように香りは、古代エジプトのミイラ作りにおいて、その名の由来が表すように、単なる保存の手段ではなく、死生観や霊的な考えにおいても重要な意味合いをもっていたのです。
古代エジプトの人々にとって香りは、神々への祈りや死者への尊敬といった文化的な意義を持った深い重要性を誇るものでした。
クレオパトラと香りの関係
絶世の美女といわれたクレオパトラ。彼女の魅力や権力の巧妙な使い方は時代を超えて語り継がれています。その中でも香りは、彼女の魅力の一部として重要な役割を果たしていました。香りは当時、権威や豊かさ、そして美しさを象徴するものでした。彼女はその香りを使いこなすことで、自らの存在感を際立たせ、他者に強烈な印象を与えることができたのです。
クレオパトラの愛した香り
クレオパトラが特に愛した香りの一つとして有名なのは、バラの香りです。また、彼女は、美容のため、高価な香油や香料をたっぷりと体に塗り、バラやジャスミンの花を浮かべて入浴し、ハーブで染めた豪華絢爛な衣装を身に纏っていました。また、フランキンセンス(乳香)やミルラ(没薬)、アンバーグリス(龍涎香)や「キフィー」というブレンド香料などさまざまな香りを使いこなしていたといわれています。このように、クレオパトラの香りは、彼女の華やかな生活と同様に、豪華さを象徴するものであり、彼女の存在感を一層引き立てました。
香りの政治的・外交的利用
香りはクレオパトラにとって、ただの装飾的なもので終わることはありませんでした。彼女は香りを政治的及び外交的な武器としても巧みに利用しました。クレオパトラの香りは、カエサルやアントニウスといった数々の英雄たちをも魅了しました。ローマの将軍マルクス・アントニウスを晩餐会に招待した際には、広い会場の床一面に、くるぶしまで埋まるほどのバラの花を敷き詰め、アントニウスや他の軍人たちは彼女に一目置くようになったというエピソードは有名です。その香りは彼女の美しさを引き立てるだけでなく、媚薬のように機能し、ローマの権力者に対して強い影響を与えたと考えられています。
このように、クレオパトラにとって香りは自己表現や他者との関係構築において欠かせない要素であり、彼女の政治的な交渉や戦略にも利用され、時には外交の手段ともなりました。彼女の香りの使い方は、単に嗜好を楽しむためだけではなく、心理的な影響を与える力を持つものでした。
古代エジプトの香りを再現してみましょう!
古代エジプトでは、神事や王の葬儀などの宗教儀式で香料が焚かれていました。その中でも格段に上等で神聖視されていたのが、クレオパトラも好んで使用していた「キフィー」という香料です。今回はこのキフィーを再現してみることで、古代の人々が感じていた香りの世界を体験してみましょう。
神殿の焚香料「キフィー」
キフィーは、古代エジプトの寺院で神々に捧げられる香りとして用いられていました。「キフィー」とは「聖なる煙」を意味し、邪気を払い、心を落ち着かせ、眠りを誘う効果があるといわれていました。古くから人々が香りの心身への作用に気づいていたこともうかがい知れますね。その製造過程は非常に厳格で、新月から作り始め、満月に完成させるという儀式的な手順があり、さまざまな植物から得られる香料をブレンドしたもので、主にミルラ、フランキンセンス、シナモン、アニス、ハッカ、ジュニパーベリーやサイプレス、はちみつに干しブドウ、カルダモンなどのスパイス、そして複数の花のエキスなどが含まれていたといわれ、非常に複雑な香りであることが想像できます。
具体的なレシピは残されていませんし、不明な材料や今日では手に入らないものがあり、完全再現するのは難しいのですが、市販されている精油(エッセンシャルオイル)をブレンドして再現してみたレシピがありますので、こちらに掲載します。
■神殿の焚香料「キフィー」レシピの例(割合)
フランキンセンス(2滴)
ミルラ(2滴)
カルダモン(1滴)
ガルバナム(1滴)
サンダルウッド(1滴)
ジュニパーベリー(1滴)
ペパーミント(1滴)
ベンゾイン(1滴)
レモングラス(1滴)
ローズ(1滴)
世界文化社(発売)公益社団法人日本アロマ環境協会(発行)「アロマテラピー検定公式テキスト」P86.いにしえのレシピを再現してみましょう!より
香りは、時空を超えて私たちをつなげるものです。古代エジプトの人々が感じていた香りを再現することで、私たちも彼らの文化や信仰を少しでも理解できるかもしれません。さあ、是非一度ご自宅で「キフィー」を作って、古代の香りの世界に浸ってみてはいかがでしょうか?
まとめ
いかがでしたか。この記事では、古代エジプトにおける香りの重要性、特に神々への捧げ物やミイラに関する考察、また著名な女王クレオパトラと香りとの深い関係について探求してきました。
このように、香りは古代エジプトの文化において、伝統や信仰、政治までをも彩る重要な要素でした。香りを一般的に日常的に楽しめるようになった現代において、古代エジプトの神聖な香りを再現して思いを馳せることができるなんてロマンがありますよね。香りは時を超えて私たちに何を伝えてくれるのか、これからも探求を続けてみたいと思います。
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【湘南】気軽に楽しむアロマ | nico_tto~かおりの教室~
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