アロマテラピーの歴史:現代~アロマテラピーの誕生と発展
「アロマテラピー」という言葉が生まれたのは、意外にも現代のヨーロッパであることをご存知ですか?科学、医学、そして技術が発展していく一方、古来からの自然療法が見直され、アロマテラピーが誕生します。この記事では、アロマテラピーが確立し、精油の薬理作用に加え、心身の健康や美容などの研究が盛んになり、ホリスティックな考え方が生まれていく様子を追い、その根本的な思想や重要な人物に焦点を当てています。特に、ヨーロッパでのアロマテラピーの確立に貢献したパイオニアたちや、日本における香料産業の発展など、地域ごとの独自の歩みを丁寧に解説します。
また、日本特有の「和精油」の魅力にも触れ、アロマテラピーがどのように日本の文化に融合してきたのかもお伝えします。
目次
ヨーロッパ:アロマテラピーの確立
化学合成薬品が主流の中、近代ヨーロッパでは、しばらく衰退していた自然療法が見直されていきます。そして、ついにアロマテラピーが誕生します。
ここでは、アロマテラピーの確立に重要な貢献をした人物とその研究の進展について見ていきましょう。
ルネ・モーリス・ガットフォセ
アロマテラピーという言葉の生みの親は、フランス人化学者、ルネ・モーリス・ガットフォセ。彼は化学実験中の事故でやけどを負い、治療にラベンダー精油を使用します。その経験から、精油の治療的な効果に着目し、研究を進め、1937年に『Aromatherapie』を著し、「アロマテラピー」という言葉を作りました。「アロマ」が「芳香」、「テラピー」は「療法」を意味します。
ジャン・バルネ
フランスの医学博用士ジャン・バルネは、第二次世界大戦やインドシナ戦争に軍医として従軍し、負傷者たちの治療に精油から作った薬剤を用いました。1964年、その臨床データをもとに『AROMATHERAPIE(植物=芳香療法)』を著しました。彼は「役に立つこと」や「科学的領域にとどまること」に重点を置き、医師や薬剤師たちにも同意を求めて、医療現場でのアロマテラピーの啓発に力を尽くしました。このような背景から、フランスでは主として精油を薬として用いる方法が研究され発展します。現在でも、フランスのアロマテラピーの大きな特徴となっています。
マルグリット・モーリー
1960年代にヨーロッパで活躍したのがオーストリア出身の生化学者、マルグリット・モーリーです。彼女は、一人一人の心と身体の両面を見て精油を選び、植物油で希釈したトリートメントオイルにより、アロマテラピーを健康と美容の分野に取り入れました。これまでの内服中心、薬理作用重視のアロマテラピーとは対照的で、のちにホリスティック・アロマテラピーと呼ばれるようになります。1961年には著書『Le capital ‘Jenesse’(最も大切なもの…若さ)』を出版。英訳され、イギリスのアロンテラピー界にも大きな影響を与えました。
におい研究の進化
2004年、アメリカのリチャード・アクセル博士とリンダ・バック博士が、「嗅覚システムの組織とにおいの受容体」(odorant receptors and the organization of the olfactory system)の研究でノーベル医学生理学賞を受賞しました。この研究は、人間がどうやって「におい」を識別し、記憶するのかを解き明かしたものです。同時に、嗅細胞の中にある、においの受容体を形成する遺伝子の数が、すべての遺伝子数の約3%に該当することも発見されました。
日本:アロマテラピーの広がり
日本における香料産業の始まり
明治時代、西洋から石けん、香水、薬酒などが輸入され、日本の香り文化が大きく変わります。日本でも精油を得る目的で、農産物としてハッカ(薄荷)やラベンダーの栽培を開始。ハッカは明治の初めごろから、北海道の北見市を中心に栽培が行われ、昭和45年ごろまで香料原料として採取されています。
ラベンダーは昭和12年、香料会社が化粧品香料としての栽培を目指し、フランスから種子を入手したことに始まります。北海道の富良野地方では品種改良など、試行錯誤して土地に合う変異種の栽培が続いています。
鳥居鎮夫
香りの心理効果の研究を行う、鳥居鎮夫(東邦大学名誉教授)は、随伴性陰性変動(CNV)と呼ばれる特殊な脳波を用いて、ラベンダーやジャスミンの香りの鎮静作用や興奮作用を実証。1986年にイギリスで開催されたシンポジウムで、その実験結果を発表し、アロマテラピーの学術研究の先駆者として海外でも高い評価を得ています。
ロバート・ティスランド
1980年代後半、イギリスのロバート・ティスランドの著書『アロマテラピー(芳香療法)の理論と実際(The Art of Aromatherapy)』(1985年版)が翻訳出版され、日本でもアロマテラピーが広まり始めます。1990年代には、アロマテラピー関連の専門誌が創刊され、マスメディアもアロマテラピーを紹介し始めます。バブル経済の崩壊や、阪神淡路大震災などが重なったこの時期は、人々が「癒し」に関心を寄せ始めたこともあり、アロマテラピーは急速に広まりました。
「日本アロマテラピー協会」の発足
一方、専門家の間では、日本人にとっての安全な精油の使い方、活用法の標準化を求める声が聞かれるようになり、1996年4月、アロマテラピーの健全な発展と普及啓発を図ることを目的に、非営利団体(任意団体)「日本アロマテラピー協会(AAJ)」が設立されました。その後、2005年にAAJは社団法人 、2012年に「公益社団法人 日本アロマ環境協会(AEAJ…Aroma Environment Association of Japan)」と体制を変えた後も、その事業を継承しています。現在は、アロマテラピーの普及を図る日本で唯一の公益社団法人として、自然の香りのある豊かな環境(アロマ環境)を作る活動も積極的に展開しています。
日本特有の「和精油」に注目
日本のアロマテラピーの中で見逃せないのが、「和精油」です。ヒノキ、ハッカ、ヒバ、クロモジ、ユズ、ショウガなどは、国内外から注目を集めています。日本に古くから自生する植物や、生活に馴染みのある植物から作られる、日本発の精油として、今後ますます広がりを見せていきそうです。
まとめ
アロマテラピーは、古代から人々の生活に寄り添い、心身の健康を支えてきました。特に、西洋と日本におけるアロマテラピーの発展はそれぞれ異なる背景を持ちつつ、相互に影響を及ぼしてきたことが興味深いです。
まず、ヨーロッパにおけるアロマテラピーの確立は、ルネ・モーリス・ガットフォセやジャン・バルネ、マルグリット・モーリーといった先駆者によって進められました。特にガットフォセは自らの経験をきっかけに精油についての研究を進め、「アロマテラピー」という言葉を作りました。また、ジャン・バルネはアロマテラピーの医療現場での啓発に尽力し、マルグリット・モーリーはアロマテラピーを健康と美容の分野に取り入れました。こうした先駆者たちの研究により、アロマテラピーはますます発展していったのです。
一方、日本では、アロマテラピーの広がりが見られます。日本における香料産業の始まりは、香りの文化が根付いている国として、アロマテラピーの受け入れをスムーズに進めました。鳥居鎮夫は、日本におけるアロマテラピー研究の先駆者として、ジャスミンやラベンダーの興奮・鎮静作用を実証しました。また、ロバート・ティスランドの著書がきっかけとなり、日本においてアロマテラピーが広がり始めます。このような流れの中で、「日本アロマテラピー協会」が発足し、自然の香りのある豊かな環境(アロマ環境)を作る活動を展開しています。
そして、日本独特の「和精油」が注目を集めています。これらの精油は、伝統的な日本の植物を基にしており、特に和ハッカやシソ、ユズなど、日本特有の香料が持つ香りは、国内外から注目を集めています。
このように、アロマテラピーは国ごとに異なるアプローチや理論を持って進化しており、今後も国際的に交流されながら発展していくでしょう。心地良い香りとともに生活の質を向上させるアロマテラピーは、これからの時代においても重要な役割を果たすことが予想されます。
関連情報
【湘南】気軽に楽しむアロマ | nico_tto~かおりの教室~
音楽のインスピレーションから生まれた「earphonearoma (イヤホンアロマ)」シリーズをメインに、暮らしを彩るアロマグッズを販売。ワークショップ等も随時開催。
屋号 | nico_tto~かおりの教室~ |
---|---|
代表者名 | 山田 香織(ヤマダ カオリ) |
info@nicotto-kaori.com |